説明力が上がれば、仕事や人間関係はもっとうまくいく
説明とは何か、「説明」できますか?
「結局、何が言いたいの?」
「要はどういうこと?」
「うーん、わかるようでわからないなぁ……」
会議、商談、報連相、プレゼンテーション……。ビジネスの現場のコミュニケーションで、これらのセリフを言われた経験のある方は、多いのではないでしょうか?
あるいは、会議や商談、プレゼンテーションに臨む前に資料を作っていて、うまくまとまらない。事前には言いたいことがあったはずが、いざ話す段階になると、うまく言葉が出てこない。こんな悩みを持つ方も、多いのではないでしょうか?
「結局何が言いたいの?」も「言いたいことがまとまらない」も、同じ問題を指しています。受け手側が発した言葉か、伝え手側が心に浮かべた言葉かという違いはありますが、これらは「説明内容が整理されていない」という同じ問題を指摘しています。
私は、多くのコミュニケーションの基礎にあるのは、「説明」だと考えます。 説得も、交渉も、議論も、和解も、あるいは謝罪も、まずはあなたの考えを伝える「説明」から始まります。ビジネスにおける多くの活動も、たとえAIやDXが話題になる昨今にあっても、本質的には人間同士の営みである以上、説明のやりとりから始まることがほとんどです。伝わる説明ができれば、ビジネスは円滑に進むのではないでしょうか。
説明力がある方が、ビジネスを制するのです。
「説明」で大事な5つの要素とは
では「説明」って何でしょうか?
大事な要素はこの5つです。
「だれへ」
「何を」
「どういう状況で」
「どうやって」
「どうして」
まず、「だれへ」についてです。「だれへ」は、「説明」の相手、受け手の方(々)のことです。
相手は一人のこともあれば、複数人、それも多数のこともあります。見知った方だけでなく、顔も名前も知らない誰かのこともあります。
人によっては動物や植物が相手なだけでなく、最近ではAIに「説明」する場面も増えてきましたが、基本的には、「説明」の受け手としては、同じ人間を想定していただければ大丈夫です。
この受け手のことを、「ターゲットオーディエンス」と言います。
ターゲットオーディエンスという「説明」の受け手側の目的、理由、動機をふまえる方が、伝わりやすく、わかりやすい「説明」になると思います。
「だれへ」に並んで大切なことがあります。「どうして」についてです。
「どうして」は、「説明」の主体である伝え手側の、目的、理由、動機です。
伝え手側の都合ばかりにとらわれて、ターゲットオーディエンスを置き去りにしたような「説明」はうまくなさそうですね。
そしてまた、受け手側の都合ばかりにとらわれて、伝え手側がいだく目的、理由、動機がぼやけていたり、薄っぺらかったりすれば、メッセージは人の頭にも心にも響かないものなると思います。
「ターゲットオーディエンス」と「目的」。この2つの間を行ったり来たりすることが、よい、うまい、優れた「説明」には欠かせません。伝え手と受け手の双方の立場を何度も入れ替えてみることで、伝え手にとっても受け手にとっても、有意義な「説明」になります。
さて、受け手であるターゲットオーディエンスの都合と、伝え手の都合である目的に次いで登場するのが、「何を」にあたるものです。
伝え手の目的、その受け手であるターゲットオーディエンスの都合の双方を、うまくふまえたモノのことです。
そのモノとは、「メッセージ」です。
大事なことは、伝え手と受け手という人間同士が、「説明」というコミュニケーションを行う際に、工夫できるのは「説明」の対象になるモノ、コト自体ではなくて、メッセージという情報のカタマリで、それは人間関係の産物だということです。
複数のメッセージを束ねるメッセージ。メッセージの中でも、一番大事なメッセージが、キーメッセージです。
「説明」では、このキーメッセージを伝える、伝えきることがとても大事です。
覚えきれないほどのメッセージを、ターゲットオーディエンスにただ受け取らせるのではなく、
受け手がすばやく理解でき、頭の中で整理しやすく説明することが重要です。
そのような説明の「構造」を、最後に紹介する著書では紹介しています。
さてあと2つ、「どういう状況で」と「どうやって」についても、見ておきたいと思います。
「どのような状況で」は、いわゆるTPOとも言い換えられます。
TPOとは、T(Time:時間)、P(Place:場所)、O(Occasion:機会)の略です。
つまり、どのような時間や場所、機会か、ということです。
また「どうやって」伝えるかによっても、「説明」は違ったものになりそうではないでしょうか?
「Eメールで」、「電話で」、「口頭で」、「動画を見せて」、「英語で」など、いわゆる、コミュニケーションの手段や様式(=モード)についてです。
さて、やっと「説明」に大切な要素が一通り出そろったようです。まとめます。
ターゲットオーディエンスと目的の双方をふまえて、キーメッセージを軸としたメッセージを、TPOをふまえながら、ふさわしい手段・様式で工夫しながら伝えることが、よい、上手い、優れた「説明」のために大切ということです。
何が「説明」とその他のコミュニケーションを分けるのか?
まず、ただ認知を求めるだけでは「説明」とまでは言えず、理解を求めることが、「説明」の成立条件です。
ちょっと変な例ですが、あそこにいるAさんに「説明」してきて欲しいとBさんに頼んだとします。頼まれたBさんはAさんに「おーい!」とだけ呼びかけます。その直後、「はい、説明してきたよ」という「説明」をBさんから自分が受けたら、どう思いますか?呼びかけだけの「説明」も、自分への「説明」(正確に言うと、報告)も、両方ともこれでは「説明」とは言えないと、言いたくなりますね。
「説明」が「説明」であるためには、伝え手が目的をもって、受け手であるターゲットオーディエンスの理解を求めようとすることが、必要ということになりそうですね。
また、「説明」から、メッセージを取り払ったらどうなるでしょうか――?
――なんだか、よくわかりませんね。
そうです。実は、メッセージが存在しないコミュニケーションというのは、人間関係の中ではあまり設定できないのかもしれません。
人が自然に言葉を学び、また、自分以外の方(々)の気持ちを想像する限り、メッセージは常に生まれ出てくるのでしょう。
もちろん、メッセージはあるけど、キーメッセージがない「説明」はたくさんあります。
この場合、あまりよくない、うまくない、優れていない「説明」になるだけですね。
また、TPOや手段・様式は、コミュニケーションを成立させる、物理的、社会的、認識的な条件です。
これらがない想定というのは、哲学や思想の議論に譲った方がよさそうですので、(「理性」や「感情」だけでなく、「魂」に響くメッセージなども)ここでは扱いません。
まとめると、メッセージやTPO、手段・様式は、「説明」を含むコミュニケーションには自然と備わっている、欠くことがないということです。
つまり、先に見た「説明」にとって大事な要素はすべて、同時に「説明」にとって欠かせないものということになります、ただ大事なだけでなく、欠かせない要素だったわけですね。
これらの「説明」に大事な要素をふまえながら、「説明」だけではなく、その応用にあたる「説得」、それらが飛び交う「交渉」、そして「和解」のコミュニケーションを促すシンプルで世界標準のフレームワーク、「メッセージハウス」について詳しく知りたい方は、私の講演やセミナー、講座を、ぜひご受講いただければ幸いです。
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